ゴールデンウィークの読書はこれで決まり! 犬が活躍するミステリー本


待ちに待ったゴールデンウィーク!

旅行やお出かけもいいですが、時には自宅やお気に入りのカフェでゆっくり読書……なんて休日もいいかも?
さて、何の本を読もうかと思った貴方。
そこはやはり、愛犬家としてどこまでも“犬”にこだわりたいもの。
ワンちゃんが登場する本は世にたくさんありますが、for Bliss(フォービー)がこのGWにオススメするのは、犬が主役級の活躍をするミステリー。
作者の愛犬魂を感じつつ、ハラハラドキドキの世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。

犬と旅とグルメ。世界にファンが多いシリーズ

まずお勧めしたいのが、イギリス発のミステリー『パンプルムース氏』シリーズです。

パンプルムース氏(ファンからは愛称で「パ氏」と呼ばれています)は、某グルメ・ガイドブックの覆面調査員。元パリ警視庁の敏腕刑事で、女性がらみの問題で退職した過去を持つという、色気も食い気もある紳士です。
パ氏の相棒として活躍するのが元警察犬のポムフリット。現役時代に警察犬として最高の栄誉「黄金の骨賞」を受賞したという、優秀なオスのブラッドハウンドです。

この老犬ポムフリット、パ氏と一緒に一流レストランを食べ歩いているだけあって、人間顔負けのグルメなのです。
そもそも、ポムフリットの食通の才能を見出したパ氏が、歳をとって老犬ホーム行きになるところだったポムフリットを引き取ってレストラン調査旅の相棒にした、といういきさつがあります。
老犬ならではの飄々とした、達観した雰囲気がありながら、時に若い犬に負けない活躍ぶりを発揮するところが、ポムフリットの何とも言えない魅力です。

「パンプルムース」はフランス語でグレープフルーツ、「ポムフリット」はフライドポテトのこと。名前からしてグルメ(?)な元警察コンビがレストラン調査の目的で各地を旅し、難事件・怪事件に巻き込まれるというこのシリーズ。
パ氏の教養溢れるウィットに富んだ会話、老犬ポムフリットのチャーミングさ、登場する一流レストランのメニューの素晴らしさなど、読みどころがたくさんあります。

作者はマイケル・ボンド氏。あの『くまのパディントン』の作者です。
子ども向けのほのぼのとしたストーリーが続く『くまのパディントン』シリーズとは打って変わり、マイケル・ボンド氏が「大人のために書いた」という『パンプルムース氏』シリーズ。
ミステリーとしての面白さはもちろんですが、全編を貫くお洒落な雰囲気と散りばめられたシャレに、思わずニヤリとしてしまいます。
東京創元社から現在8冊刊行されており、ゴールデンウィークにまとめ読みするのにお勧めです。

『パンプルムース家の犬』(マイケル・ボンド 著/木村博江 訳/創元推理文庫)

傷ついた過去を持つ男と犬の骨太なミステリー

もう一冊お勧めするのが、『パンムルムース』シリーズとガラリと変わってハードボイルドな、沢木冬吾氏の『約束の森』です。
タイトルに「犬」の文字はありませんが、単行本・文庫本共に、どう見ても犬が主役と感じさせる装丁。
その期待通り、ある一匹のドーベルマンが最初から最後まで重要な役割を果たします。

『約束の森』単行本(沢木冬吾 著/角川書店)

主人公の奥野侑也は殺人事件で妻を亡くし、深い傷を抱え孤独に生きる中年男性。実は彼は元警視庁公安に属していました。
そんな彼がある日、「あるモウテルの管理人をしてほしい」という依頼(任務)を受けます。その地で彼を待っていたのは謎めいた若い男女と、虐待で心身傷ついたドーベルマンでした。
「マクナイト」というそのドーベルマンと徐々に心を通わせる主人公。
そして、若い男女の素性が明らかになるに従い、怪しい登場人物や謎はどんどん増えて行き、一体これはどういう事件で何が起きているのか? とハラハラドキドキの展開になります。
国家的陰謀に巻き込まれ、立ち向かう主人公たちのラストの戦闘シーンは、手に汗を握るシーンが続きます。

マクナイトの他にもキーとなる犬が出てきて、勇猛果敢な活躍をします。
「主人のために身を挺して戦う」という犬の戦闘的な姿に、普段忘れている“イヌ”の本能を思い出します。

まさに日本発のハードボイルド作品で、アクションシーンや骨太ミステリーが好きな愛犬家の方にはぴったりの一冊です。(ただし、猫に関する残酷な描写が一部あるので、愛猫家の方にはそこだけ辛いかもしれません)

『約束の森』文庫版(沢木冬吾 著/角川文庫)

犬って最高!

元刑事、訳あって退職、相棒が犬という共通点があるものの、その世界は全く異なるこの2作品(比べる時点で両作品のファンの方は怒るかも!)ですが、作者の犬に対する愛と信頼が伝わってくることは確かです。

皆さんもきっと、犬の素晴らしさを改めて実感すると共に、読み終わった後に思わず自分の愛犬を抱きしめたくなることでしょう。