よくドイツは“ペット大国”といわれますが、実際はどうなのでしょう?
日常、街の至る所に犬がいることが当たり前の光景。
そんなドイツの様子をご紹介します。
「犬大国」=「ドイツ」のイメージ
「愛犬家が多くペットに関連する様々な環境が整っている国」として、イギリスやスイス、オランダなどヨーロッパ諸国を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
その中でも特にドイツはペットに対する意識が高く、犬のしつけも徹底し、古くから動物愛護関連法規や施設が整っていることでも有名です。
また、「犬大国」=「ドイツ」のイメージを決定づけている理由のひとつに、ドイツ原産の犬の種類がとても多いことも挙げられるかもしれません。
日本でも大人気で飼育頭数も多いダックスフント、ポメラニアン、ミニチュア・シュナウザー、ミニチュア・ピンシャー。読者の方にもこれらの犬種の飼い主さんは多いのではないでしょうか。
警察犬のイメージが強いジャーマンシェパードに強靭なドーベルマン、ボクサー。
大型犬の代表ワイマラナー、ロットワイラーに世界一の体高を誇るグレートデーン。
他にも、猿に似た個性的な顔立ちが魅力のアーフェンピンシャーなど、ドイツ原産の犬種は日本でも広く愛されています。
ドイツ犬愛好家の飼い主さんには、フードはもちろんのこと、首輪・リードなどの革製品までドイツ製にこだわる方が多いといいます。
愛犬の犬種の特徴や歴史について学ぶうちに、背景にあるドイツの犬文化に自然に触れているのかも知れませんね。
ドイツ人は猫派?!
そんな「犬大国」のドイツですが、犬の飼育頭数が約540万頭に対して、なんと猫は870万頭と、実は猫のほうが圧倒的に数は多いのです!
「ドイツ人」=「犬好き」と思いきや、意外にも猫好きのほうが多いのでしょうか?
ドイツの方に話を聞いてみると、「犬と猫どちらも飼っている」「大型犬1頭に猫5匹」など、犬も猫もどちらも飼っている人が多いけど、猫は多頭飼いの場合が多いので、数字では猫のほうが上なのでは、とのことでした。
つまるところ、「ドイツ人は犬も猫もどちらも大好きな国民なのです」という結論だそうです。
それにしても、一般的にドイツに犬のイメージはあっても猫のイメージはあまりありませんよね。
実際にドイツを旅行した経験がある方ならおわかりかと思いますが、これは、公園はもちろんのこと、電車の中やレストラン、お店でしょっちゅう犬を連れた人を見かけるのに対し、ドイツの猫は室内飼いが徹底さているため、街で猫(いわゆるノラ猫も含む)を見かけることがほとんどないからではないでしょうか。
電車に大型犬が乗ってくる!
ドイツだけでなく北ヨーロッパの国に行って驚くことのひとつに、電車に犬が乗っているということがあります。
日本のように、小型犬が犬用キャリーやカートに入っているのではなく、ゴールデンレトリバーのような大型犬が、さも当然というように普通に、飼い主さんと一緒に乗り込んできます。
犬が乗り込んで迷惑そうな顔をしたり、席を変えたりする人はいません。なぜなら、どんな犬でもおとなしくじっとしているからです。
その様子を見ていると、もしかしたら東京の電車で見かける日本の子どものほうが騒がしく落ち着きがないのでは?と思ってしまいます。(ちなみに、公共の場ではドイツ人の小さい子どもも、とてもしつけが行き届いている印象を受けます。ドイツには「子どもと犬はドイツ人に育てさせなさい」ということわざがあるほど、小さい頃から非情に厳しくしつけられます)
行儀が良いからレストランも大丈夫
電車だけではありません。
飲食店は基本的にペット同伴可です。
「え?ここも大丈夫なの?」と思うほどの高級レストランでもペット同伴可のお店が多いです。
美味しそうな食べ物の香りの誘惑にも負けず、ワンちゃんたちはご主人様の食事が済むまで、何時間でもじっとおとなしく伏せています。
その健気な様子になんだか可哀想な気もしてきますが、これも日頃のしつけの賜物なのでしょう。
飼い主と犬の主従関係をはっきり見るようで、これこそが本来の人と犬の関係なのかもしれないと考えさせられます。
最近は日本でもワンちゃん同伴可のカフェやレストランが増えてきました。
ただ、ペット同伴可であることがセールスポイントのドッグカフェであったり、テラス席限定だったりと、ペット同伴可が市民権を得ているとはまだまだいえません。
しつけの大切さ
もちろん、全てのドイツ人が犬好き、動物好きというわけではありません。中には犬が苦手、嫌いな人もいるはずです。
しかし、これだけ犬が公共の場にいることが許容されている社会が実現されているわけです。
それはやはり、きちんと“しつけされている”ということに尽きるでしょう。
ドイツでは犬をドッグスクール(しつけ教室)に通わせることが一般的です。
犬たちはそこで他の犬とふれあって犬同士の距離の取り方を学んだり、様々な誘惑に打ち勝って飼い主の命令に従う訓練を行います。
ドッグスクールはどの町にもあり、住民にとって非情に身近な存在です。
飼い主さんが通いやすいよう夜間コースがあったり、費用的な負担がかからないよう学生割引があったりします。(そもそも料金が安い。ワンレッスン1,000円くらいのところも)
ドッグトレーナーに犬について様々なことを相談したり、飼い主同士で情報交換しあったりと、愛犬家にとって大切なコミュニケーションの場になっています。
「当たり前のこと」という意識
確かに「犬大国」「ペット先進国」といえるドイツ。
しかし、当のドイツ人はそんなふうに思っていないというのが面白いところです。
古い歴史を持つあるティアハイム(動物保護施設)に行ったときのこと。
所長に「なぜドイツはペット先進国なのでしょう?」と質問したら、こんな答えが返ってきました。
「自分たちにとってはこれが当たり前なので、あまり意識したことがないのです。
近年になって外国の人が視察に来たり、海外のメディアが取材に来て質問されて、それでようやく、もしかしたらドイツはペットや動物に対しての意識が高いのかな?と初めて気づかされました」
「当たり前」のこととして動物を愛し、犬をしつけ、人と犬が共生する社会を実現している……。
日本もそんな社会に向けて、まずは飼い主一人ひとりが自分の愛犬に責任を持ちたいものですね。