東京新宿にある老舗デパート京王百貨店で、8月17日から21日までの5日間にわたって開催された『わんにゃんEXPO』。
デパートの催事にありがちな、ペットグッズ販売だけのイベントではありません。
なんと、会場では猫の譲渡会が!
写真展も保護犬猫をテーマにしたり、ギャラリートークで殺処分問題を取り上げたりと、“可愛いだけじゃない”ペットの世界を広く発信していました。
デパートの7階がペット一色に
お盆明けではあるものの、まだまだ子供たちは夏休みまっただ中のデパートは、いつにも増して混雑しています。
新宿駅西口にある京王百貨店も、連日家族連れで大にぎわい。
そんな時期に7階の大催場で開催されたのは、都道府県物産展でも全国駅弁展でもなく、ペットに関するイベントでした。
会場では『飛び猫』の写真集で有名な写真家・五十嵐健太さんの作品が展示され、ファンが駆けつけていました。
また、朝日新聞社が運営するペットメディア「sippo」主催の写真展『みんなイヌ、みんなネコ』では、著名人と愛犬・愛猫との愛情溢れる写真が展示されていました。
一般の方の愛犬・愛猫の写真も多く展示されており、パネルに添えられた飼い主さんのコメントは、運命的な出会いのストーリーや、「あなたに出会えて良かった」「いつもありがとう。ずっと一緒だよ」など感謝と愛に満ちたもので、読んでいるとホロリとくるメッセージがたくさんありました。
ペット問題第一人者たちからのメッセージ
木曜日から始まったこのイベントですが、メインはやはり週末です。
土曜日には、愛猫家として知られる女優のとよた真帆さんがギャラリートークに登場し、日曜日には、料理研究家で元衆議院議員の動物愛護活動家・藤野真紀子さんと、『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』の著者として知られるAERA記者、太田匡彦さんの対談が行われました。
藤野さんは保護犬・保護猫を迎え入れることの大変さと、それを乗り越えた先にある素晴らしさについて力説。溢れる犬猫愛が伝わってきました。
また、自らが発起人のひとりでもある『TOKYO ZEROキャンペーン』についてもお話があり、
「殺処分ゼロというのは、それがゴールではなく、そこからスタートだということ。大切なのは、“ゼロであり続ける”ことを目指すことです」
と語りました。
日本のペット問題に切り込むジャーナリストとして、いつもは舌鋒鋭い太田さんですが、この日はファミリー向けトークモードだったようです。
会場に家族連れや小さいお子さんもいたことからか、ペットにまつわる問題の難しいお話やショッキングなお話はありませんでした。
太田さんが強調したのは、こうした写真展や猫の譲渡会がデパートで行われたことの意義です。
「百貨店で譲渡会だなんて考えられなかった。今回、こういう多くの方が訪れる場所で行われたことの意味は大きいです。こういう犬猫がいるんだ、譲渡会があるんだということが広まってくれれば」
と語りました。
大盛況! 猫の譲渡会
『わんにゃんEXPO』最大の目玉は何といっても、土日の2日間に行われた猫の譲渡会です。
デパートの催事場といえば、物産展や駅弁展など食品を扱う場所。そこに保護猫を入れるということだけでも、考えてみたら画期的なことなのです。
百貨店として初の試みとのことで、初日は予想以上の譲渡会参加希望者に対応が追いつかず、急遽整理券を配布したものの、入場できない人が続出。
2日目は、1日目の教訓を活かし入場時間の調整などを行いましたが、それでも会場内に入れない人が出たほどの盛況ぶりでした。
やはり、デパートというアクセス良く身近な場所で行われたことで、譲渡会への参加のハードルが下がったのかもしれません。
また、譲渡会のことを知らなかった買い物客が、エレベーターの中に貼ってあった催事のお知らせを見て興味を持って参加した、というケースもあったようです。
実際に保護猫を迎えるまでに、保護団体による厳しいチェックやトライアルなどの過程があるため、ペットショップの店頭で犬猫を見て「可愛い!」とその場で衝動買いするようなことはできませんが、里親を待っている犬猫がいること、譲渡会という場があるということを広く知ってもらうためには、デパートでの開催はうってつけではないでしょうか。
今回のケースを成功例とし、京王百貨店では毎年恒例のイベントに、また他のデパートにはぜひ続いていただきたいものです。