秋の夜長、読書の秋。
愛犬家としてはここでもやはり「犬」にこだわりたいところ。
ワンちゃんが主役の本は数えきれないほどありますが、あまりにも有名なものについては、かえって読んだことがないという方も多いのでは。
そこでfor Bliss(フォービー)では、犬が主役の名作の中から定番中の定番のものをご紹介します。
犬といえばこれ。号泣のラストシーン
おそらく誰もが涙のラストシーンを語れるであろう『フランダースの犬』。
アントワープの大聖堂でようやくルーベンスの絵を目にした少年ネロ。
倒れたネロの下に、吹雪の中必死で辿り着いたパトラッシュが駆け寄ります。
そして、
「パトラッシュ……疲れたろう。僕も疲れたんだ……。
なんだかとても眠いんだ……パトラッシュ……」
と目を閉じ、天使たちに抱かれてパトラッシュと共に天に昇って行くネロ。
この辺で涙腺崩壊。
あれ、でもこれって、アニメ『世界名作劇場』ですよね。
そうなんです。
『フランダースの犬』はアニメシリーズ『世界名作劇場』のイメージがあまりにも強く、また、号泣必至のラストシーンが繰り返し何度もいろいろな番組で放映されるため、結末とあらすじを何となく知っている方はとても多いのですが、実は本を読んだことがない、という方もまた多いのです。
1872年に発表された『フランダースの犬』はベルギーが舞台ですが、作者はイギリスの作家ウィーダ。ウィーダの本名はマリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメーといって、女性です。
ウィーダは大の愛犬家で多くの犬と暮らし、動物愛護協会設立に尽力したことでも知られています。犬への深い愛が『フランダースの犬』という作品に反映されているのも納得ですね。
原作ではネロは自ら死を選ぶのですが、美しく感動的ながらも悲しいラストシーンについては現代でも賛否両論あり、国によってはハッピーエンド(ネロとパトラッシュが死なない)で出版されているヴァージョンもあります。
日本語では絵本から児童文学まで、様々な翻訳が出版されています。菊池寛や林芙美子の翻訳もあるのはあまり知られてないところ。
いろいろ比べて自分好みの翻訳を見つけるのも、こうした古くからの名作の楽しみ方のひとつです。
アニメのイメージが強い分、挿絵に違和感を感じるのもまた醍醐味といえましょう。
ちなみに、パトラッシュはブーヴィエ・デ・フランドルという犬種だといわれています。
少年少女時代にきっと一度は手にしたはず
多くの方が「そういえば小学生の頃に夢中になった」と懐かしむであろう、冒険小説・探偵小説。
その中でも不動の人気を誇るのが『シャーロック・ホームズ』シリーズではないでしょうか。
ホームズといえばこれ、『バスカヴィル家の犬』を思い出す方も多いのではないでしょうか。
富豪のバスカヴィル家には代々「魔犬」の伝説が伝わっていた。
ある日、当主のチャールズ・バスカヴィル卿が遺体で発見され、側には巨大な犬の足跡が残されていた。
謎を解くために、別の仕事でロンドンを離れられないホームズの代わりに館に赴くワトソン。怪しげな登場人物たち、そして湿地帯から聞こえてくる恐ろしい犬の鳴き声……。
『バスカヴィル家の犬』はホームズシリーズの4つある長編のひとつで、特に知名度の高い作品です。
原題は『The hound of the Baskervilles』と、そのまま「バスカヴィル家の犬」なのですが、おどろおどろしい雰囲気を高めるためか、『バスカヴィル(バスカービル)の魔犬』という題名のヴァージョンも多いです。
タイトルひとつでだいぶイメージが変わりますね。
さて、この魔犬ことバスカヴィル家の犬ですが、幽霊の類ではなく実際に登場します。そして、文字通り“魔犬”の姿をしています。
しかしそれにはきちんとトリックがあり、魔犬の正体が明かされると「なあんだ」とガッカリします。それどころか、ワンちゃんかわいそう……とさえ思えてきます。
昔読んだ推理小説を今になって読み返してみると、当時は気付かなかった伏線や人間模様が見えてきて、実に新鮮な読書体験となります。
まさに秋の夜長にぴったりでお勧めです。
この季節にしか読めないものを
“読書の秋”とはいいますが、人は大人になると忙しく、読書といってもビジネス本や実用書、最新刊や小説ならベストセラーを優先してしまい、急かされるように本の内容を消化しているのではないでしょうか。
読書の時間を捻出できるというのは、実は贅沢なことかもしれません。
だからこそ、たまには夜更かしして仕事とは全く関係ない本や、昔読んだ本をもう一度手に取ってみてはいかがでしょう。
だって、秋の夜は長いのですから!